*ヨコメ便り(横目で作家2人の制作風景を見守る営業・広報担当者が不定期に綴ります。)



「たこ」(右下)一見すると正義感満載のたこが小さな魚を守るために勇敢に立ち回っている様ですが、実際は魚群に驚いてスミを吐き、自分の吐いたスミにも驚いてしまっているという場面です。 基本登場生物みんな焦った様子です。生きるって大変。
「たこ」をモチーフにした手ぬぐいは10年程前に一度制作しています (左下)。型紙がボロボロになり、長い間生産中止となっていました。同じ図案の型紙を彫り直すよりも、違うものを作りたい気持ちが勝るようです。kata kataにはそういった理由から、消えていった手ぬぐいが多くあります・・・。2021年の「たこ」は前作とは構成を変えたようです。まずはたこが吐き出したスミの彫り方を整理したことで、登場人物たちに目が向くようになりました。モチーフの動きが分かりやすくなったのは、赤・水色・紺を色のかたまりで配置したことにもありそうです。
型染めの工夫「つり」
型紙を彫るときに忘れてはいけないのが「つり」です。写真 (左上)の中のピンク色の線を「つり」と言います。これは型染めの制約の一つで互いに繋がらないカタチは型紙から抜け落ちてしまいます。「つり」にはカタチどうしを繋げ、位置を保つ重要な役割があります。それに「つり」を図案の中にうまく取り入れることで独特な表現がうまれるように思います。よく見ると小魚たちはみんな繋がっていますね!





「かば」 広い背中は居心地が良さそう。
大きな声では公表していませんが、かばのお尻の周りを泳いでいる小魚は、かばの糞を楽しみに集まってきているそうです。以前どこかの川の底に溜まった大量のかばの糞が原因で魚が酸素不足に陥る危険がある、という記事を読みました。うまく循環して、幸せに共生して欲しいと願っています。
「糊置き」
布の上に型紙を置き、糊(のり)をヘラで均一にのばします。ヘラで糊を伸ばす様子は、どことなくケーキをデコレートしているパティシエのようです。型紙をそっとはがし、カタチが鮮明に見えた時、色の構成を考える楽しみが本格的に*始まります。
*下絵の段階から色を考えているケースもありますが、実際に染色される部分・カタチが見え始めるこのタイミングで頭の中でさまざまな色の組み合わせを想像をしながら作業を進めていることが多いようです。



「わに」ここに描かれているわには1匹でしょうか、5匹でしょうか。
色の心理効果はデザインにおいて重要とよくいいます。kata kataの2人も毎作品大切に色を選んでいます。描かれた「ものがたり」を演出する方法の一つが「色」だからです。シーンに合う色、登場人物の性格に合う色、季節に合う色、部屋に飾りたくなる色、話し合いながら数パターンのサンプルを染めていきます。こげ茶色の「ワニ」はなんだか強そうです、今回は優しい雰囲気のオリーブ色が採用となりました。




「りす」おいしい色に染まったどんぐりをみて嬉しそうに走り回っているところです。
サンプルを染める
kata kataの手ぬぐいは、自分たちで染めたサンプルを元に注染の職人さんによって染められます。過去の色レシピを見返し、あの時は成功だった、あれはちょっとダメだった、今回はこんな挑戦をしてみよう、いや、やっぱりやめよう、と堂々巡りすることが多々あります。理由は注染特有の「差しわけ」にあります。異なる色を染める場合、色ごとに糊で土手を作り、その部分に染料を注ぎます。(→参照)染料を同時に注ぐ事で「ぼかし」や「にじみ」の表現が可能となるのですが、この際に混ざる染料の色や相性にとても気を使います。kata kataの色レシピには15年に渡って試行錯誤して集めた色のデータが書かれています。新しい色の組み合わせは完成品を見るまでドキドキするようです。試行錯誤は続いています。

サンプルを元に注染の職人さんによって染められた手ぬぐいです。包みを解く瞬間はこちらまでドキドキします。
新作手ぬぐいはkata kataオンラインショップにて販売中です。
ぜひご覧ください。
文:高井睦